名前

そこにいるのは分かっている。
それが誰かだってことも知っている。
でもそれが本当に君なのか
まだ確信することが出来ないから
僕は何人もいるし、そして君も。

ただ誰かのそばにいたいだけのに。
まるで反発し合う磁石みたいに
一定の距離を取り合うことの強制。
無言で近づいてきて離れようとしないのは
大嫌いな思い出と幻滅する現在。

どうすれば知ることができるか。
誰かでしかない誰かのことを
たった一人の存在として確認するために
僕はどうしたらいいのだろう。
自分の存在さえ誰かと区別のつかない僕に
一人だけの誰かをどうやって気付けばいいのだろう。

もし本のタイトルみたいに
あいまいな僕とだれかの境界線を
はっきりと区別できる名前があったら
僕は誰かが君であることを知るのだろうか。
始まりと終わりのある一冊の本みたいに
名前とともに、最後のページを読み終えた
安心感を僕は手に入れたい。

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By GloomyWind 2003/4/4
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